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にげみち。

「ichiei」の雑文置き場。最近、短歌に凝ってます。

10.朝 

羽毛の空。毛羽立つ曲面。かたちばかりつよがる虹。
生まれたばかりの霜に抱かれて、月の光が死んでゆく。

二律背反なんて、そんなスマートなものじゃない。
めざめることは夢見ることの実践に他ならないのだから。

スーツ姿の計算機のうちだした理論では、本日、朝、十一万ドル。
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09.昨日見た夢 

ここにいるんだ。今日に。きっとね、うん、私は私を段ボールの箱に入れよう。
でも、あんまりにも昨日の夢がちかすぎるから、明日にいるような心持ちもある。
歴史の指標は寒々しくて、まともに見ていられない。だから、ときどきみあやまる。

私はどこにいる。
「どこ」という未定の大陸に住んでいる。

昨日見た夢が頬に百万ドルのキスをして、めざめた場所は、知らない断崖。あ、ここが今日とゆうのね。

1.起床した  

明けても明けても夜である。

12.あなたのすべて  

 レタスとトマトとベーコンといっしょにバンズにはさんで、しっぽまで食べちゃいたい、わ。

08.散らかった部屋 

 食べ散らかしたアニマルビスケット、クレヨンで上書きした絵本、A・B・C‥‥の彫られた木のパズル、室内用のパイプのブランコ、かえるのかたちのビーズクッション、空っぽのフィルムケースが三つ、優しい色合いのプラスチックケースに覆われたルームランプ、全体を木目調でまとめられた部屋のピンクのレースカーテン、さしこむ光はしぼられて夢で見た明るさだけが残っている。

 子ども部屋にはもう誰もいません。

03.僕が僕であるために  

見ろよ。つまらないくだらない・ほんと・ひどいものさ。それが僕がいままで作り上げてきた・嘘だね・作り上げるなんて上等なものかい・どこかから掠めてきたパーツをちょっと並び替えただけのパッチワークだよ。創作? なにをきどってんのさ。ただの模倣じゃないか、認めろよ。大好きな人たちにすこしでも近づきたくて・真実のところは彼らになりかわりたい・見よう見まね・トレースに耳コピ・なぞらえる・なんでもやってきた。ときには偉ぶって精神論とか、ぶちかました夜もあったっけ。お月様ごめんなさい悪気はなかったんです。僕はあなたみたいになりたかった。あなたみたいなたったひとつのもの。だけど僕は・あぁ僕は・あまりにだらしなくその他大勢で。

僕が僕であるということ。誰かのおこぼれをいただいて今日も生きてゆきます。

3.家を後に  

 蕭条とした干潟をひとりで行った。くつ、くつ、とうしろの方から聞こえてくるのは私の足頸までをもくわえこんだ泥土が、星の退屈を嘆いての吐息。振り返る。足跡は、神話の蛇のように、ゆるやかな曲線をえがいている。長さはきっと一由旬。まだまだ足りぬとあぶくに急かされ、私は道のないところをふたたび歩き出す。膝に滲みた汚濁がどこかしら龍の仔に似ているのが、微笑ましい。さぁ、もうひとふんばり。


なにも考えないで書くとこーなるという悪例。

10.もう動かない君 

 無骨という形容以外に他のない、分厚い刃、
 が、銀の糸をひきながらなめらかに虚空の弧をなぞり、果てにある魂を刈り取った。コトン、と、案外軽い音をさせて堕ちる首は、少女の夢を具現化したよう。陶器のような無機質の白い肌、緑の黒髪は風もないのにほのかに揺らめき、うすくつりあがった桜桃の口角がことばなき艶を刻む。それらはすべて、かつておもちゃのヴァニティケースをつかって憧れた先の象徴であるが、たったひとつ足りぬものが、ある。
 瞳が、ない。
 ないかどうかを、識別することすら不可能だ。
 そらおそろしいほどの力で瞼を閉ざした彼女。生きたときの最期の事は死んだあとの永遠の事と同じくなる。少女の瞳はどんなだったのだろうか。天空の青か榛の茶か森の緑か、連ねても連ねても推定を想像を憧憬を超えたところに《色》があるような気がしてならない。

「誰も私を見ない」鎌をしまいながら、死神はさみしくつぶやいた。

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だから意味なしだって。

2.食事 

 日を追うごとに食の細くなっていく伸一郎さんを心配してみるが、あぁだいじょうぶだいじょうぶ、と煮え切らない返事をくりかえすだけで、ちっともまともにとりあってくれない。じゃあせめて、と、毎日なにかしらの御膳を支度して運んではいる。伸一郎さんはそのたびに叮嚀な礼をして受け取ってくれるし、翌日には洗ったお皿をやっぱり叮嚀な感謝といっしょに返してくれるけど、どれだけ口にしているかしれたものじゃない。だって伸さんは弱っていく一方だから。
 一口でも食べてくれれば、それでもう、終わるのに。何があってそんなになったかいっかな教えてくれない伸一郎さんを、わたしはわたしの食事で眠らせてあげたいだけだのに。

5.夕焼けを見た 

 ふと気がつけば黄昏だった。オレンジのこざっぱりした光の射し込む和室。薄手のタオルケット一枚だけを共として、私は畳のうえにちょくせつうつぶせていた。頭脳の遠慮ない質量をうけとめていた腕はかるくいたむほどしびれており、足は冷えた空気にさらされていたせいか石膏のように白く硬くなっている。覚醒したものの義務だというように、私はのそのそと起きあがるが、全身の神経はいまだ睡りのあたたかさとけだるさを欲しており、せめてもの慰みに私はタオルケットを体に巻き付ける。夢の残滓をすいこんだ寝具はいくらか毛羽立っていて、その凹凸があちらの世界になにかをのこしてきた私の心の隙間を埋め合わせる。完全ではないけれど、でも気持ちがよかった。
 窓に目をやる。汚れのめだつガラスの向こう、西の空、鉄塔がみえる。日輪を背負って黒い。やがて来るであろう夜より濃い影と一体になって天空へ伸びあがる、億年生きた樹木に勝るとも劣らない、矜恃あるシルエットを私はうつくしいと思う。夢幻の泥に浸された脳髄ではあったが、どうやら世界への感歎は忘れてはいなかったようだ。
 けれども、もういいかげんめざめなければいけないだろう。
 ささやかながらの間に合わせのような障子をひく。暗闇になった部屋で、私は突如孤独を思い出す。あぁそうか、私は誰からも忘れ去られて百年眠り続けていたのだった。


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 意味なし。書きたくなっただけ。なんとなく思いついたものを書き連ねただけ。‥‥夕焼け見てないよ。