上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
【お知らせ】実験的にblog拍手を表示しております。気分によってすぐ消すかもしれません。
――鳥は空を飛びたくて飛んでいるのではない。
と、彼は云いました。路地裏に相応の、深みのある、夕べの鐘のような低い声でした。
――飛ばなければ死んでしまうから、しかたなしにそうしているだけだ。彼等に、選択はない。自由も横暴も強大もない。
「では、」
と、わたしは尋ねます。きりりと面(おもて)をあげて、精々真っ向から彼を見据えます。
「あなたもそうなのですか?」
他人を殺さなければ、誰かに殺されるというのですか?
彼は返答をよこしませんでした。その代わり、肉切り包丁を重ねてわたしの胸に沈めました。蒸気をともなう血飛沫が、胸元からぱっと吹き上がります。それは、蝶の一斉の飛翔によく酷似して。緋く濡れる彼がどこか淋しそうに見えたのは、きっと錯覚なのでしょう。だってそのときは、わたし、もう事切れておりましたから。