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にげみち。   負け犬の遠吠え

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2005_03_08 .Tue
[物語]前世紀  
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「会話文だけにする必然性がまったくない」という批評を受けたが、たんに地の文にまわす文字数が足りなかっただけの話である。ま、書きたかっただけの話だから、それで満足。1000字小説。1998/12/03

「あの審査はなんだったんですかっ。ね、先輩、聴いてます?」
「聴いてるよ。勿論」
「私たちの演奏のことはともかくとして、あの審査員どもときたら、T高校のクラリネット四重奏とR高校の金管六重奏を、同じBランクにしたんですよ。みんな、ブーイングしてたじゃないですか。T高校のは素晴らしい演奏でした。感動的なハーモニーでした。Aにするべきです。R高校のは、あれ、どう考えてもCです。だって、演奏が途中で止まったんですよ」
「難しい曲だったからね」
「難しかろうと易しかろうと、本番で失敗したのは事実です」
「そっか」
「まあ、R高校が悪いわけじゃありません。悪いのは、Cを付けなかった審査員です。金管演奏にはやたら甘い点を付けるという、わけのわからない不公平を実践した、あいつらです! ……悔しいんです。あんな聴く能力もない、それこそCランクな耳しか持たないやつらに、私たちの演奏を判断されて落とされたかと思うと」
「しかたないよ。貧乏地方都市の予選ごときが、一流の審査員を呼べるわけないし。今日の人たちだって、ボランティアなんだよ」
「分かってます。でも、先輩、審査評を読みましたか? 私たちの演奏、『迫力不足』って書かれてるんですよ。『他の人たちと比べてパワーが感じられない』。他の演奏って、みんなカルテットやクインテットじゃないですか。デュオがかなわないのは、当たり前ですよ」
「それをカバーできなかった、こちらの力不足だったってことさ」
「なんか、私一人だけ吠えて、莫迦みたいなんですけど。先輩は悔しくないんですか?」
「ちゃんと、悔しいよ」
「じゃ、それを顔に出してください。先輩はもう卒業で、今年がラストチャンスだったんですよ。そんな悟りきった言葉ばっかり、並べないでください」
「そんな理由で、Aを貰うほうが情けないって。ラストでもないよ、大学行っても続けるつもりだから。あんたも同じ大学においで。そしたら、またコンビ組もう。で、今度こそどんな莫迦でも感嘆させる演奏をして、全国大会で一位を取って、そんときには、地方都市の審査員の無能を叫んで、あいつらを全国区でのCにしてやろう」
「……『ねちっこい演奏が、却って芸術的』と書かれるだけはありますね」
「では、未来に向けて、反省会でもしよう」
「はぁい。分かりました。大会のテープ、持ってきます」

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