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いや聞かないでくれ。若かったんだ。1995年ぐらい? きっと1000字以内。 男はひとやすみだっと叫んだ。レポートの提出締切は正午、そして今は当日午前四時。規定枚数の半分も書き上げていないがそれがどうした俺は疲れたんだああ、と自分一人しかいない部屋の天井に向かって喚いた。こういうとき、止めてやる人間がいない一人暮らしはたちが悪い。
男は台所へ向かった。熱いものでも飲んでリラックスと思い、インスタントコーヒーの瓶を手に取る、と、やけに軽い。開けてみると、案の定からである。そういえば、今朝使い切ってしまった記憶もある。冷蔵庫を開けると同じく空っぽ。男はしまったと小声を出した。買い置きに行くのを忘れたぜ。仕方ない、別の方法で休憩を取ろう。男は浴室へ方向を換えて、服を脱ぎカランを捻る。シャワーを浴びよう、さあ湯よ疲れを流しておくれ。ところが、出るべきものが出てこない。故障、の二文字が黒々と太ゴチック体で男の頭の中をよぎる。憤慨してカランを殴ると、手がじんじん痛むだけだった。たてつづきに振られるとは、こうなったらもう、純粋な気分転換をしたほうがいいな。自分にそう言いきかせた途端、昨日録画しておいたドラマをまだ見ていないことを思い出した。ああこれだ。少々浮き立った気持ちでビデオを再生すると、何故だかお堅い教育番組が流れ出す。予約設定を誤ったのか……。
ぶちり。頭の中心よりげんこつ一個分ほど右側で、線が一本切れる音がした。男はコートを手に取ると、玄関を飛び出した。外は、大雨強風警報がいつ出てもおかしくないような嵐であるにもかかわらず、である。彼の家から五百メートルばかり東に行ったところに、コンビニがある。当然、雑誌もあれば弁当もある。そこでなければ真の休息は得られないという強迫観念が、彼を無謀な行動に向かわせた。
叩き付ける大粒の雨。吹き付ける凶悪な風。いつもの気軽な一歩が、今日は全力の十歩である。ともすればくじけそうになる己を励ましながら、男は自然界の暴れん坊将軍と勇猛果敢に闘った。相手は強敵だった、が、ついに彼は勝利をもぎとった。無事にコンビニに辿り着いたのである。すると。
『本日、暴風雨のため臨時休業いたします』
無常な張り紙が彼を迎えた。
男はずるずると倒れ込む。疲れ果てたその身体に、もういいのよゆっくりお休みなさいと、何処からか優しく囁く声が届いた。そうします僕は寝ます。男は誘われるまま意識を幽界に飛ばす。おやすみなさい……。
勿論、レポートは締切に間に合わなかった。