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月夜ですね。
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「月光のことを月影ともいいますけどね、私が集めなきゃならんのはほんとうの蔭のほうなのです。檸檬色のあかるい光ではなくって、いろいろにひずんで紺色がかったあいつらですよ。これを人に配ることを私は生業としています。需要があるかって? ありますとも。眠れない彼らは、なにより薄闇を必要としているのですから、あぁいそがしいいそがしい」
街一番の煙突のてっぺんでぼやいている。月蔭の収集者は、おしゃべりしながらでないと作業ができない性質をしているようだ。
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真鍮製の蜥蜴は王都をぐるりと取り囲む城壁における装飾の一部分として生み出されたが、月光がルビーフルーツの湿り気を帯びる晩にだけ、肉の蜥蜴とおなじように歩き回ることを許されている。
ある日のこと、ざっと三百年ぶりにめざめてみると、その晩には革命のパレードが催されていた。王制を象徴するはずのいかめしい紋章のはいった旗は王城のてっぺんからひきずりおろされ、広場でたきつけの材料にされていた。
蜥蜴は見た。学齢にもたっしていないであろう少年が、大人の真似をして万歳をしているのを。いつもだったら彼はベッドに追い立てられる時間であったが、今日は特別だということで許されている。なぜならば今日は祝祭で、喜びをもりあげる人員はすこしでも多くいたほうがいいというおとなたちの思惑と、とにかくなんでもいいから深夜の秘密を味わってみたいという少年の願望が一致したからだ。
王はどこへ消えたのだろうか、と蜥蜴はすこし考えたが、街を歩き回るにはあまり時間がない。もう夜が明けるのだ。あくびを噛み殺しながら、門扉の真ん中の定位置にもどった。
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一仕事終えた博士が歩いている。
ガムみたいに長く伸びた陰影。彼には半月がよく似合う。
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月夜でしたね。
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フォルダをあさっていたら発見。去年の夏ごろに書いたものじゃなかったっけか。