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これはまぁきっぱりと駄作。1000字小説。1998/11/19 サトルが、あたしのことをバカだと言う。小学校では教えてくれない漢字を指して、読めないだろうって嗤う。サトルだって読めないくせに、言えばぶたれるから黙ってる。それに、あたしがバカなのは多分、本当のことだから。
あたしは昼休んで夜働く。勤めてるフーゾクの時間に合わせると、どうしてもそうなってしまう。別にセックスは嫌いじゃないけど、仕事にしたいほど好きなわけでもなくて、ならどうして働いてるかと言うと、あたしがやれることのなかで、これが一番儲かるものだから。あたし、頭使う仕事は駄目だし。
お金がいる。本当は、サトルと二人の静かな暮らしをするだけなら、そんなにたくさんいらない。でも、サトルがパチンコとかに使ってしまうから、結構必要になったりする。あんまり楽しそうに思えないけど、それが分からないのは、やっぱりバカだからかもしれない。
サトルは働かない。昔は働いていたけど、上の人と喧嘩をしてからは、ずうっとぶらぶらしている。「誰も俺のことを理解しない」が口癖だ。あたしも、分からない。それが就職しないのとどんなふうに関係あるのとか、誰が理解してくれるのとか。訊いてみたら「バカには分からないよ」と、殴られて終わり。
サトルの隣で眠るのが好き。あたしは仔猫、人のぬくもりを感じてまどろむ。サトルは少しうっとうしそうな顔をするけど、押し退けたりはしない、広い背中を預けてくれる。たまに応えてくれるときもあって、そのときのサトルは「バカだな」って頬を撫でてくれる手が、熱い。
時々、サトルは泣く。あたしの乳房に顔を埋めて、躰に両腕を回して泣きじゃくる。何かを訴えてるけど、あんまりしゃくりあげるから言葉ははっきりしない。誰に対して言ってるのかも聞き取れない。ひたすらに謝っていることだけ、なんとか分かる。汗とか涙とかよだれとか、他にもある、そんなものでべたべたになった自分の体は醜くて、早くシャワーを浴びたいけど、サトルのほうが大切だから抱きしめ返す。大丈夫だよ、あたしがいるよ、と頭を撫でる。これくらいしか出来ない、でも、乾いた髪が指に引っかかるのが嬉しくて。
独りのとき、声が聞こえることがある。「いつまでもこんな生活をしてはいけない」って、ここ数年会ってないお母さんの声。あたしは目をぎゅうっと閉じて、耳をてのひらで押さえ込んで、「バカだから分からないの」と幻を消す。
サトル、今、側にいて欲しい。